
scene.5
病室で年を越し、一ヶ月後に千里は何とか退院した。
これからは暫くリハビリ生活だ。
学校には、退院の三日後復帰した。
さすがに、登校初日教室は異様な雰囲気だった。
更に居心地が悪くなった感は否めない。
(まぁ、自業自得だからね)
その日の昼休み、千里は園長室に呼び出しを喰らった。
園長室に入ると、千里のクラスの担任とヴァイオリン科の担当教師が来ている。
そして、凡その想像通り北尾も呼ばれていた。
覚悟を決めて顔を上げると、正面に、何かの式典の時以外にその姿を見る事も無い学園長がどっしりと座っていた。
千里は、学園長直々の訓告を受けた。
逆に言えば、訓告で済んだのだ。
より厳しい処罰を受けたのは、部外者に
まして音楽科の生徒に洋弓場を開放していた北尾の方だった。
本来なら、現部長の平池にも処分が及ぶはずの処、彼は一人でそれを引き受けた。
「 以上、北尾智史君、君は一週間の停学処分となります。真に残念なことですが…」
学園長の言葉に、北尾が黙って一礼した。
「あの! この人は 」
慌てて抗議しようとした千里を、北尾が制止した。
「水野千里君、君には…厳重注意を言い渡します。以後、軽率な行動は控えるように」
学園長の言葉に、千里は一瞬眩暈を憶えた。
(何で北尾さんが停学で、当事者のオレが訓告なんだよ!?)
つまりそれは、完全回復を見込めない状態でも千里を手放したくない、という事だった。
学園側は、千里の経歴に瑕疵を残したくないらしい。
しかし、一度騒ぎになってしまった以上、誰かは処分せねばならない。
その為の生贄の羊として、北尾が選ばれたのだ。
この場面でも千里は、自分が処罰を受けるよりも辛い状況を味わう羽目になった。