
scene.2
更に階段を上ると、そこには踊り場の様な小さなスペースと、ドアが三つしかなかった。
八室はありそうだった二階に較べると、拍子抜けする程少ない部屋数だ。
(ていうか、もしかして、ここ屋根裏?)
そう言えば、外から見た時は二階建てだと思った様な気がする。
「どうぞ」
忍がドアを開け、北尾を中に招き入れた。
「どうも、お邪魔します」
改めて畏まってしまう。
北尾はどちらかと言うと友人は自宅に招く事の方が多く、自分が他所の家に行く事は少ない。
入ってみると、中は意外に広かった。
一階…二階の華美な内装に較べると、フローリングの床にラグマットを敷いただけの、シンプルな室内に却って驚いた。
天井は、ドア正面の壁のかなり低い位置から斜めにせり上がっている。
そのちょうど真ん中辺りに、天窓が一つあった。
「適当に着替えて下さい。荷物は、その机の上でもベッドの上でも、好きな所に置いて頂いて結構ですから」
そう言うと、忍はさっさと着替え始めた。
(制服の下、何も着てねぇ…! 一昨日もコート無しでこの格好だったのか!?)
一昨日もコートを持っていなかったりして、その薄着に驚かされた。
しかしそれを認識していても尚、驚きを隠せなかった。
その肌の色の白さも相まって、見ている方が寒々しく感じる。
服の上から見ても華奢ではあったが、脱ぐと彼は一層身が薄かった。
(十二月の気候で、よくもそんな薄着でいられるよな)
北尾は、半ば呆れ気味で見入っていた。
「何ですか?」
北尾の視線に気付いて、忍が怪訝そうに首を捻る。
「いや、何でも 」
すぐに目を逸らし、自らも着替えを始めた。
「あ、そう言えば、さっきの 二階の人、俺の顔見て随分驚いていたみたいだったけど」
普通に挨拶したつもりだったのに、あまりにも驚かれたので、北尾はそれが結構気になっていた。
「ああ…それは、俺が、この家に人を呼んだのが初めてだったからじゃないでしょうか」
忍がさらっと答えた。
「ああ、そりゃ驚くだろうな…て、何だって!?」
北尾は、忍の返答に心底驚いた。
(この年まで、家に人を呼んだ事が無い!?)
そして、何故初めて招き入れられたのが対して親しくも無い自分なのか、北尾は二重に驚いた。
「友達、いませんから」
止めの一言を、彼は付け足した。
そして、それきり黙り込んでしまった。
散々薄着で驚かせた後輩の姿を見ると、何故か今日はしっかりコートを着込んでいる。
真っ白のハーフコートだった。
(今が真冬だってことに、やっと気付いたか?)
その下は相変わらず薄着ではあったが。
そして、着替え終わった二人はもう一度書斎の志月に声を掛け、屋敷を後にした。