赫い夜
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赫い 夢 を 見ていた。
明滅するネオン。
酒精の下僕達が笑う甲高い声。
夢の中で、忍は、夜の歓楽街を必死に走っていた。
得体の知れない恐怖が、走り去る彼の身体を覆う。
何から逃げているのか、何処へ向かって走っているのか、分からないまま走っている。
駆ける忍の視界の端に、月が飛び込んできた。
やけに大きな満月は、まるで血が滲んだ様に赫い。
月ガ 追ッテクルヨ
ドコマデモ
月ガ
赫イ 月ガ 追ッテ クルヨ
赫い月が、忍の背中を追いかける。
明滅する赤と青。
エチレン灯の下で、失われてゆく顔の色。
これは、夢だ。
自分は今、夢の中にいるのだ。
忍にはその自覚があるのに、足をとめる事が出来ない。
本能が鳴らす警鐘のままに、ひたすら逃げ続けていた。
走れ。
走れ。
走れ。
走れ。
此の夜から逃れる為に。
月に食べられない様に。
赫い夢の中を ただ 闇雲に 走り続けて いた 。