12月24日 ― 志月 ― Ⅱ

scene.1

 翌早朝、木ノ内にも何告げず、再び志月は置屋を訪れた。
 丁度店仕舞の時刻だった。
  あら? お客さん」
 店先では、女将が提灯の灯を落とそうとしている手を止めた。
「…おはようございます」
 歓楽街の入り口まではタクシーで来たが、その先は少し小走りなぐらいの早足で来た。
 志月の息が、かなり上がっていた。
「そんな急ぎはって…、お忘れ物ですか?」
 余程興味無さ気に映っていたのだろう。
 再び訪れた志月の姿に、女将は心底驚いている。
「いえ、…ちょっとお話があって  
「まぁ、ここで立ち話もナンですしねぇ、上がりはったら如何です?」
 手に持っていた提灯を手早く仕舞うと、女将は志月を奥の間へ招いた。
 商売用の客間ではない、自宅用の客間に通される。
 お茶とお茶菓子を志月の前に並べた後、彼女は真向かいに腰を下ろした。
「それで、お話…ゆうのんは?」
 女将の問いに、志月は静かに深呼吸をして、息を整えてから答えた。
「朱実さんの、養っていると言う子の事で」
 冷静に  落ち着いて  自らの心に言い聞かせて志月は話し始めた。
 包み隠さず事情を伝える。
 女将は志月の話を黙って聞いていた。
 彼女がこの申し出をどう受け取ったのか、その表情からは読み取れなかった。
「お話はよう分かりました。あの子にとっても大変有難いお話やとは思います  ただ…」
 女将はここで一呼吸置き、少し躊躇った様に視線を泳がせた。
「あの子  私らはゆきちゃんゆきちゃんて、女の子みたいに呼んどりますけど…ホンマは『幸也』言うて男の子なんですよ。
 なにぶんあの容姿やし、うちの商売柄玄関先に男の子おいとくよりは、いうのんもあってあんな格好させてますけど」
 この女将の一言には、正直、志月もかなり驚いた。
 何せ、『篠舞によく似た子供』だった為、ごく自然に『女の子』だと思い込んでしまったのだ。
「本当にお客さんがそういう目的でなく、あの子を…ということであればあまり関係ないのかもしれませんけど、今のお話向きやと、多分女の子や思てはるやろな、思いまして」
 女将が、驚きを隠せない志月の顔を見ながら、苦笑した。


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